楽器車の悲劇その3 「ヤッホー!」
(文責・ボーン助谷)
=序章=
その年も押迫った頃、仙台で仕事が入った。当日の入り時間が早いので、主催者に宿を取ってもらい、前日に夜の仙台を満喫しようという事になった。
昼過ぎには東京を出発し、透のDr車にダディ、三郎、俺が乗り、楽器車にキー坊、茜、どんまいめぐみ、ローディーのモリオとういう構成で仙台に向かった。
いつものように東北道に入って最初のS.A.でションベン休憩をし、
三郎が
「次はいつもの△△のS.A.で会おうな。飛ばすんじゃねぇぞ!」
キー坊が
「いつものように着かず離れずで編隊組んでいくからさぁ。何かあったら追い抜いて知らせるよ。じゃあね」
と言って、いつもの様に別れた。
順調に北上し、宇都宮の手前迄は抜きっこしながら、追い越す時には必ずバカな事をしながら(当然俺は窓にケツを押しつけ、その度に透は『スケちゃん!ヤメロー!キッタネ〜な〜!俺の車だぞ!後でチャンと洗車させるぞー!』とマジで怒っていた)いつものように旅を楽しんでいた。
そんな事をしていたら、後ろにいたダンプがパッシングはする!クラクションは鳴らす!の大騒ぎを始め「何かあったのか?」と思いつつ道を譲ると、助手席の男が窓を開け、物凄い形相で大声で叫びながらそのダンプは猛スピードで追い抜いていった。
「なんだありゃ?マナーもクソもねぇなぁ」
「あんなのに構っちゃダメだよ。アブナイ運転はヤダね。巻き込まれないようにしなくちゃ。」
「あ〜その通りだ。安全運転第一で行こうな。」
などと言いながら、しばし盛り上がった。
那須の山道の入った頃
「あれ?楽器車来ねぇなぁ。」
「少しスピード落として、来るの待ってみるか?抜いて行ったって事ないよなぁ。」
「いや見てない。誰か見た?」
「抜いたら誰か気付くだろう?スピード落として追い越す車を良く見てりゃ、そのうち大騒ぎしながら来るさ。」
「そうだよな」
少しすると東北道の反対車線を何台かの消防車がサイレンを鳴らしながら走っていった。
「おっ!高速で消防車が走ってんの初めて見た!こりゃ珍しい事もあるもんだな。」
「高速走らなきゃなんない所まで行くんだ?ごくろ〜さんなこった。」
「アハハ、こりゃイイもの見た!こりゃネタで使えるな。ギャハハ!」
と、その時はノンキに事を考えていた。
しかし、福島過ぎても一向に楽器車の姿は見えない。さすがに心配になり
「もしかすると抜いて行ったかもしれないから△△S.A.まで行ってみよう。」
「そうだな。知らないうちに抜いて行ったかも知れないな。」
今度はスピードを上げて目的地を目指した。しかしそこにも楽器車の姿は無かった。
「こっちもチンタラ走ってたんで、仙台宮城まで行っちゃったかもしんねぇなぁ。」
「そうだな。行ってみよう。」
しかしそこにも楽器車の姿は無かった。
「仙台南と間違えてんじゃねぇか?あいつらソソッカシイからなぁ」
「キー坊が乗ってんだからしょがねぇか?アハハ。そっちまで戻ってみよう。」
携帯なんて無い時代なので連絡の取りようがない。動いて確認するしか方法がなかった。が、そこにも楽器車の姿は無い。
「事故ったか?まさか?」
料金所で聞いてみたが「そのような情報は入っていません」と言われ、
「とりあえず那須まで戻ってみよう。反対車線を良く見ててくれよ。」
「判った!路肩に停まっているかもしれないんで皆でよく見ておくよ。」
せっかく仙台まで着いたのだが、東北道を引き返す事にした。
那須まで戻ったが判らない。すでに暗くなっていた。
「何があったんだ?事故も無かったっていうし。仙台に行こう。ちゃんと路肩見ていてくれ!そんでP.A.もS.A.も全部入ってみよう。」
「よし判った!でも、あっちも同じ事考えて動いているってないか?」
「ありえるが、泊まる場所知っているのはこっちだけだ。出口で待っているだろう。」
さすがに心配になってきて車内での会話も無くなった。結局どこにも見当たらずに、仙台宮城に着いてしまった。
料金所を出た所に透のDr車を停め考え込んだ。しかし悪い方にしか頭が廻らない。
「どうした事か。ここに誰か残ってもう一回、今度は宇都宮まで戻ってみるか?」
「それもいいけど、時間ばかりかかって連絡も取れないんだから待つしかないだろう。」
「じゃぁどうすんだ!何もしない訳にはいかないだろう!」
「もう一度、事故があったかどうか確認してみよう。」
しかし、その様な情報は入っていないと言う。
気温も下がり真っ暗な中、途方に暮れて1時間程たった頃、見知らぬ車がパッシングをしながらクラクションを鳴らし近づいて来た。
「ヤッホー!待った〜?ギャハハハ!お待たせしました〜!」
キー坊以下全員見知らぬ車に乗り大笑いしている。こっちは口が開いたまま言葉も出ない。
=序章= 終わり。 以下、大波乱の=終章=へ。乞う御期待!
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