キー坊金太

(文責・ボーン助谷)

Daddyの高校の1年先輩。尊敬を込めて我々は彼の事を「センパイ」又は「奇人」と呼ぶ。たしか軽音楽部の部長をしていたハズである。何の事は無い、おとぼけは目黒、世田谷周辺の近所の鼻つまみ者の集団だったのである。

最初に会った時には、もうマンションに一人住まいをしており、溜まり場のようになってしまいミーティング、楽器を持ち込んでリハーサルの様な事までしていた。そこで感じたのが「だらしねぇなぁ」の一言。男一人(だったなか?)なのでしょうがないが、汚くは無いが雑然としていた。思い出すのが

「センパイ。やかん壊れてるじゃん?」

「お湯わかしてたら、気が付かなくて空焚きしてダメになったから、音の出るのに変えたんだ」

「でも壊れてるよ?」

「音がうるさいから笛をトッチャったらまた空焚きしちゃったんだよ」

「ダメじゃん」

「そんで普通の買ったんだけどまた空焚きしちゃった。アハハ」

彼の家では温かいモノが飲めない。無頓着なのか物忘れがひどいのか

「センパイ。あれ持って来た?」

「持って来てるよ。あれ!無いなぁ。どうしたのかなぁ」

とか

「これセンパイのじゃない?」

「あれぇ。どこにあった?」

「ドコにあった?じゃねぇよ。だらしねえなぁ」

「わりぃ。わりぃ。アハハ」

すべてこんなチョウシなので、みんな諦めていた。昔、軽トラでプロパンガスの配達のバイトをしていた時に、案の定ヒモでちゃんと縛っておかなかったで、玉川通りを走行中道路にボンベを散乱させたらしい。

「スゴかったんだよ!ゴロゴロ転がっちゃってさぁ。でも事故になんなかったんだよね。アハハ」

事故だよ。楽しそうに話してくれた。

当時タバコも吸わず、酒もメッポウ弱かった。しかし、シラフでよく我々について来たモノである。なにか隠れて崇高な修行をしていたのかもしれない。ベロベロに酔っぱらって大騒ぎしている他のメンバーを冷静に分析しながらも、一番はしゃいでいた記憶がある。別の機会に書こうと思うが「東北道北上中!楽器車爆発!炎上!」事件の時も、何故か冷静に一部始終をラジカセで録音し、後で楽しませてくれたりもした。

ステージ上のパフォーマンスはご覧の通り鬼気迫るものがあり、センパイがイッテしまうと我々は最後まで見届けるしかなかった。アイデア豊富なのだがツメが甘く「無理じゃねぇかぁ?」と言っても「大丈夫!大丈夫!」と言って新作をよく披露していたが、勝率2割弱。だが、めげずに挑戦する姿勢はある意味、尊敬もした。

余談だが、演奏中に接触不良かなにかで急に音が出なくなったり「ガー!ピー!ブー!」とモノスゴいノイズ出る事を私は「キー坊」と呼ぶ。笑える安易なトラブルが多かった。ちなみに酒飲んで目が据わる事を「さぶろった」と言う。

東名阪等のツアーに出る時、楽器類の他に各自バック1つ当たり前だが、センパイは「紙袋4つ」がいつものスタイルで、2日目には穴が開いたりして何かが無くなっていった。楽器車の中で「ン?」と見るとセンパイの下着であったりして、当然最終日には紙袋は姿を消していた。ツアーの楽器車の中では3分の1大騒ぎして3分の2寝ていた。

なかなかユニークな人で、動物園に行った時「ゲッパメ!ゲッパメ!」と叫んでいるのでよく見ると「げっ歯目」だったり、立ち食いソバの看板見つけて「あっ!なまそば!なまそば!」とマジに楽しませてくれた。私も「珠玉の名曲」を最近までジュダマと言っていたので笑えない。